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中国は新たな政府系ファンド創設の可能性、外貨準備運用方針転換へ


中国が外貨準備の運用利回り向上のために、新たな政府系ファンド(SWF)の運用を検討していることは、外貨準備の運用方針をそろそろ変更する時期、との中国の判断を示している。



解決の糸口が見えない債務問題を抱える欧州や超低金利政策を継続する米国の国債に対する中国の信頼低下の表れだ。

関係筋によると、中国人民銀行(中央銀行)は、総額3000億ドルのファンドを運用する新機関を設立する。
この件について直接知識のある関係筋が匿名を条件にロイターに明らかにした。

人民銀行は、通常の国債投資ではなく、欧米の実物資産などへの投資を目指す意向を示しているという。

米財政赤字の穴埋めや欧州の金融機関の資本増強のために資金を提供する代わりに、実物資産を取得するという新たな投資戦略を中国は検討している。

MESアドバイザーズのプレジデント、ポール・マーコスキー氏は「中国は、決して守られない財政再建の公約や超低金利政策よりも、実物資産のほうがいいと判断した」との見方を示した。

これまで中国は、3兆2000億ドルの外貨準備の運用において、米ドル投資に過度に傾くことを防ぐため、積極的にユーロ資産を購入してきた。
米ドルの価値は、米国債利回りが過去最低水準となるなか、ここ10年で約3分の1下落した。

<より良いリターンを求めて>

中央銀行などの公的機関の代理として為替取引を行うある市場関係者は「中国は、株式、社債、不動産など、原資産を求めている」と述べた。

関係筋によると、ポルトガル電力公社(EDP)(EDP.LS)の株式売却に向けた入札では、中国のChina Three Gorgesが最高額を提示した。

中国の顧客の海外での買収を助言する香港のある投資銀行家は、中国の海外への投資について「口にするのは簡単だが実行するのは難しい」と指摘。
「中国は農業地まで買い上げる可能性があるとの見方がある。過去には港湾の買収も検討したことがある。しかし、中国は政治的に不評となることは行いたくないはずだ」と語った。

中国国内の圧力も存在する。
中国の政府系ファンド、中国投資有限公司(CIC)は、モルガン・スタンレーやブラックストーンへの投資で損を出したことで国内から強く批判されている。

欧州の債務危機の先行き不透明感や米国のトリプルA格付けがもはや当然ではない現状では、政府系ファンドの運用担当者が新たな資産に投資を始めることは正当だろう。

BNPパリバ・インベストメント・パートナーズ(ロンドン)のグローバル部門代表、ゲーリー・スミス氏は「(外貨準備の運用担当者の間で)安全資産の概念について、かなりの戸惑いがあるようだ」と指摘する。

スミス氏によると、多額の財政赤字を抱える先進国の国債に対する不安や、異例の金融緩和策を行う国におけるインフレ高進リスクを警戒し、顧客はインフレ連動債やよりリスクの高い新興市場国への投資を進めた。
「新興市場国に投資をすればもちろんリスクは高くなる。ただ、これまで安全とされてきた資産のリスクは既に高まっており、相対的に見た場合の新興市場国のリスクは低くなっている」と指摘する。

<またとない投資機会>

JPモルガンのアナリスト、Mislav Matejka氏によると、ユーロ圏企業の株価純資産倍率は、米企業の平均を46%下回っており、世界で最も割安。

同氏は、欧州の上場企業を買収するには、過去15─20年で最も良い時期だと指摘する。

独立系の中国の政策専門家Andy Xie氏も、同様の見解を示している。

同氏は「欧州の株価は割安だ」とし「多くの欧州企業は世界中で利益を上げている。アジアの中央銀行が外貨準備の運用を米国債のような割高な国債から株式にシフトすることは理にかなっている。株式への投資でユーロ圏に資金がいきわたり、その結果、アジア諸国にも長期的に利益がもたらされる」と述べた。(Nick Edwards記者;翻訳 伊藤恭子 ;編集 佐々木美和)


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2011年12月15日 ロイターニュースより 掲載元
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